「やさしい巨人たちの星を継ぐもの」

WRITTEN BY 本名顕治




 ”チルドレン”は、リツコに呼び出しを受けた。

 しかし集まった3人を待っていたのは、ニコニコと楽しげなリツコとミサトの二人だけだった。

 「今日はエヴァとは関係ないわ。気を楽にして。

  ちょっとした実験なんだけども・・・。

  ところであなたたちは、SFは好きかしら?」

 そう言ってリツコが差し出したのは、1冊の文庫。

 タイトルは、「星を継ぐもの」とある。


 「ああ、私これ、ドイツに居たころ読んだわ」

 「僕は古本で読みました」

 「・・・・・・」


 「まぁ、レイは仕方ないにして、二人がこれを読んでるなら話は早いわ。

  一言で言うと、これに出てきた『ヴィザー』と同じものをつくりたいの」

 「確か、仮想世界を体験させるコンピューターの名前よね?」


 そう、とうなずいてリツコは続けた。

 「読んだことがないレイには説明が必要ね。

  レイ。今、あなたは私の事を見てるわね。

  目で私−−−赤木リツコという人間−−−を見ていると思ってるでしょうけど、実際には目で受けた光が視神経を興奮させ、神経がその刺激を脳に伝え、最終的に脳で、「これは赤木リツコという人間」と、判断しているのよ。

  目はただ光を受け、神経に興奮を与える役目でしかないわ。

  ということはつまり、直接、神経または脳に対して、同様な興奮を与えることができれば、目という器官を介さずに「見る」ことができるはずなのよ。わかる?」

 「はい」

 「だったら視覚、聴覚、嗅覚、触覚・・・こういう刺激全てを実際の身体からくるものは途中で遮断して、その代わりにコンピューターで作り出したものを与えてやればどうかしら。

  現実の世界で生きるように、コンピューターが作り出す仮想の世界の中で生きることができることになるわ。まるで現実と区別がつかないくらいのね。

  ・・・まぁ、そういうシステムを作るまでが大変なわけだけども。

  でも、それができあがったときのことを考えてみて頂戴。

  なにしろ現実の世界と違って物理法則に従う必要のない仮想世界だから、もう、なんだって出来ることになるわ。

  まずはこの世界をそっくりそのまま仮想世界に再現できれば、例えば、観光旅行でも仕事の出張でも、実際に時間をかけて現実世界のその場に行く必要はない。仮想世界内に再現されたそこに、瞬間的に”テレポート”で行けばいいのよね。

  食事でも、もう食べることは出来なくなったクロマグロやクジラ肉を食べることもできる。−−−まぁこれは現実世界の身体の栄養にはならないけど。

  これらはほんの一例に過ぎないわ。もう、何だってできるのだから。

  でね、この研究のために、あなた達に被験者になってもらいたいの」


 「つまりこれ、ネルフの仕事とは直接関係ないのね? リツコがこういう事するなんて、ちょっと意外ね」


 「あ、ああ、アスカ。まぁ、確かに個人的なちょっとしたお遊びみたいなものなんだけど・・・(汗)」
 「た、たまにはいいじゃないの。リツコだって息抜きも必要だし。(汗)」

 なぜかうろたえるリツコとミサト。

 「あやしいですね」とシンジ。

 「・・・も、もともとこれは、エヴァとパイロットとのA10神経接続技術の応用なの。
  人間とコンピューター間のインターフェースとして、エントリープラグとプラグスーツを流用してるし、神経接続等の基礎データはあなたたちのものだしね。

  だからこそ比較的簡単にシステムを組めて、実際に実験もできるわけなんだけど、そのかわり、あなた達しか被験者になれないのよ。ね、協力してちょうだい」

 「ふぅーん。じゃあ、ディズニーランド1日貸し切り体験とかできる?」

 「残念、アスカ。今でも技術的には可能だけど、仮想世界内で再現するための、その場所のデータがないもの。この『ネルフ本部』だったら、いくらでもデータを取り込むこともできるけど、本部なんか再現しても面白くないっしょ?」

 「・・・で、いろいろと出来ること、調べたいことはあるのだけど、まずは、”既存の映画やドラマ、特撮、アニメといった映像作品を仮想世界で再現して、自分がその中のキャラクターの一人になって、その世界での人生を楽しむ”という実験をしたいの。

  ”原作”そのままでもいいし、部分的に自分に都合のいいように設定を変えてもいいしね。そこらへんは自由よ。

  多分これは、未来世界における新しい娯楽になると思うわ。

  今の映画や小説、ゲームなんかとは比べ物にならないくらいのリアルな仮想世界で、第二、第三の人生を体験できるのだから」

 「で、物語データは、諜報部に裏で回線をつなげさせて、第三新東京市のデジタルビデオレンタル屋から入手できるようにしたの。・・・ばれたらヤバいんだけど。

  あとは作品を決めてくれたら、データを入手してMAGIで解析して、あなた達に、まるで現実のようにその作品世界を感じさせてあげる。ちょうど夢を見ているのと同じようなものね。リアルさでは比べ物にならないけど。

  そうしたらその世界の中で、自分のしたいように生きてみて。・・・時間的には、仮想世界で20年生きたとしても、現実世界ではほんの数分程度だしね」


 「で、でも、本当にこういう研究って、進めてもいいもんなんですか。

  だって、その、現実の世界で生きているからこその、人生って言うか・・・。

  それに、自分に都合のいいように、映画とかの内容をねじ曲げちゃうわけですよね。

  その、いくら”娯楽”だとしても、そんなことまでやっていいのか。

  僕も良く分かりませんけども・・・」


 突然レイが話し始めた。

 「私、このあいだ映画を見た。碇君と。『ナディゲリオン』っていうの。

  ”現実に帰れ”って内容だった」


 「・・・『ナディゲリオン』!」 ミサトが叫んだ。


 「懐かしいわねぇ。私達が大学生の頃のアニメよ。

  レイ、シンちゃんとそんなもの見たの?」(ニヤッ)

 「碇君が、お店で借りてきてくれて、二人で見たの」(ぽっ)

 ジロッとシンジをにらむアスカ。

 「あ、い、いや、綾波が、『ビデオレンタルの仕組みが分からないから教えて』なんて言うからさ」

 「ふぅーん」(ギロッ)

 「私、ビデオデッキないから、・・・碇君が、僕の家で一緒に見ようねって」(ぽっ)

 「・・・なるほど。私がいない間を狙って、女を引き込んでるのね」

 「べ、べ、別に、そんな事してないよ。たまたまそのときはアスカが出かけて居なかっただけだよ」

 「・・・私が、『一緒に見たいから「クルージング」借りてきてね』って頼んだとき、ちゃんと探してくれなかったくせにぃ!」

 「そ、そんな、犯罪捜査でハードゲイの世界に入っているうちに染まっちゃう警官の映画なんてやだよぉ!」


 ニヤッとリツコが言った。

 「でもシンジ君、女の子と見るときに、よりにもよって『ナディ』を選んでしまうとはね。・・・面白かった?」


 「全然! ヒドイですよアレ。

  途中まではちょっと刺激が強いかな?くらいの話だったのに、後半になったら、実写になったり、アニメの服着た人が映されて「気持ちいいの?」なんてテロップ入ったり、コンピュータ画面で「観客死ね!」なんて出たり、それ見てあきれてるスポンサーの姿が映ったり。なんなんですか、あれ」

 「まぁカントクが、ちょっちね」

 「最後だって、メチャクチャじゃないですか。
  二人だけ生き残った男の子の方が、いきなり背中が裂けて化け物の宇宙人の姿になって、それ見て女の子が「気持ち悪い」って、それでスタッフロールもなしでいきなり終わりですもん。そこらのアメリカC級ホラーみたいじゃないですか」


 「なるほど、劇場版を借りたのね? 残念ね。

  あれって本当は、『美しい愛の物語』だったのにねぇ」

 「まぁ、男の子と女の子が出てきましたけど、でも女の子は『あんたとだけは絶対イヤ!』なんて言ってましたよ」

 「違うわよ。そのヒロインにお兄さんがいたでしょ。

  メカ皇帝っていう美形の。彼と、その主人公の男の子の純愛物語だったのよ」

 「え? 全然そんな話じゃなかったですよ」

 「そうなのよ!!」(ギロッ×2)

  ミサトとリツコの”ダブル・ギロッ攻撃”を食らったシンジは、ちょっとチビッた。

 「あれはねぇ、TV版は予算や時間の都合で、ラスト2話はめちゃくちゃだったの。

  でも、”なんでああなったの?”って聞いた雑誌インタビューに、キャラクターは記号だ、パソコンネットの感想はクズだ、俺はオタクが嫌いだ・・・って、全然別の事を話だしてごまかしたりしてね。

  そのせいで、ますますファンから攻撃されたんだけど。

  それでも大人気だったから映画化されたんだけど、でも結局カントクは、広げすぎたストーリーをまとめきれなかったのね。

  このままだと自分が無能呼ばわりされて、また彼の大嫌いなアニメファンから攻撃されるからって、いきなり、”現実に帰れ”ってテーマをでっち上げたの。1年前、放送終了後に雑誌インタビューで言っていた事を、今度は映画本編に取り入れちゃってね。逆に観客を、「オマエラはだめな人間だ」って攻撃することで、保身を図ったのよ」

 「・・・ちょっと寒気がしますよ。正直、ああいう悪意の塊みたいなの作れちゃうってのは」

 「ま、作品の評価なんて、作った本人の評価、世間の評価、後世の評価、・・・商業作品だったら発注者の評価、消費者の評価って、いろいろモノサシがあるの。その”絶対的な判断基準”ってのはないのよね。だからカントクは満足、客は不満足・・・っていう、ただそれだけのことよ」

 「でも、今の僕たちは当時の事情なんて知らないし。
  なのにあんなの見せられて後味悪くて気分悪いし。中盤からは、なんか宗教団体の宣伝映画みたいだったけど、もう、笑い飛ばす気力もなくて」

 「ギャグアニメ。初めてのジャンル。あの人とも、見たことなかったのに。

  ・・・碇君、あれ、”ギャグ”っていうものなのでしょ?」

 「レイ。残念だけど、マジよ、マジ。ジーマよ。スタッフは」

 手をパタパタと振って皮肉るミサト。

 「まぁ、大騒ぎしたあげく、結局ああいう形になってしまったという点では、制作者も観客も含めて、壮大なギャグだったといえなくもないけどね。

  ・・・それにしても、アレは本当にもったいなかったわねぇ、ミサト。

  本当なら、”美しい男の愛の世界”の最高傑作として歴史に残ったのに」

  うっとりと、あらぬ方を見上げてつぶやくリツコ。

 「もう分かったでしょうけど、私もミサトも当時、『ナディ』の大ファンだったのよ。

  ミサトなんて、加持君と付き合ってたくせに、もう燃えちゃってね。

  私がからかっても、『やおいは入るところが違うのよ』、『だんだんね、コツがつかめてきたのよ。SSの書き方も』なんて言ってね」

 アスカが小声でシンジをつついた。

 「『ヤオイ』って何? ケーキ?」

 「さぁ?」

 「なぁによぉ、リツコだってすごかったくせに。

  んなこと言うと、あなたの『メカ皇帝×ガーゴイル副指令』モノのSSを、この子達に見せるから」

 なんとなく、”やおい”の意味が理解できて、少し引くシンジとアスカ。


 「で、劇場版では、結局メカ皇帝はズボンを下ろせなかったのよね。

  それどころかあんなデキになってしまって。

  あんまり腹たったからね、私とミサトで作戦をたてたわ。

  同じファンに呼び掛けて全国的、いや、ネットの力を借りて、全世界的に秘密の運動を展開したのよ。

  ・・・そのカントクは、次に実写映画を取ることになってたの。

  で、もうアニメ界なんて関係ないから、『ナディ』をメチャクチャにしてくれたんだけど。

  それで私たちは、その実写映画が公開されるまで、キャラクターのイメージイラスト描いたり、SS−−−サイドストーリー又はショートストーリー。FF(ファンフィクション)とも言うわ。つまりキャラクターや世界観を借りて、勝手にファンが作る作品のことね−−−を作って、カントクに山ほど送りつけたの。

  だからカントクは、その映画でも”現実に帰れ”って言わざるをえなくなってね。客に水かけたって事で、実写映画界からも追放されたわ」

 「その後は、マンガの原作やゲームのプロデュースなんかもしたけど、その先々で同じように熱狂的(に見えるような)イラスト&SS送りつけ攻撃したもんだから、そのたびに”現実に帰れ”って言う事になって、そのうち精神的にまいっちゃって。

  最後はファンの女の子のヒモになったらしいけど、その後どうなったかしら?

  コスプレ喫茶の前で焼豚のかたまりを口に詰め込まれて窒息していたなんて話も聞いたけど、まぁただの噂でしょうね」

 「で、このときの追い込みの手腕があまりに見事だって事で、ミサトはネルフの作戦部にスカウトされて、今に至るというわけよ」

 「・・・ネルフの人材って、どういうレベルで探してるのよ?」




 「さて、話がそれてしまったわね。

  それでね、なにしろ調べたいことは山ほどあるんだけど、手始めに”物語世界での人生の体験”って奴をしてもらうってことになったわけで・・・」

 「・・・なーるほど、つまりリツコとミサトは、仮想世界で、そのメカ皇帝になって”愛の世界”の人生を送りたいから、このシステムを作ろうとしてるわけね」

 「ギクッ」×2

 「美少年がお好みなの。ショタってやつ? と言うよりゲイ?」

 「・・・(ジーッ)」とリツコを見るレイ。

 怯えた目でお尻を押さえているシンジ。

 いつのまにかアスカとレイは、シンジを護るように前に立っていた。

 「い、いやぁねぇ。シンちゃん。子供に手を出したりはしないわよ。ちゃんと現実と虚構の区別はつけてるわよぉ(汗)」

 「そ、そ、それに、アスカもレイも、シンジ君も、誤解しているようだけど、これはまじめな研究なのよ。

  こ、この研究は、例えば目を失った人でも、カメラとコンピュータ、神経接続のシステムで、再び視力を回復できるようになるとか、そういう応用がきくのよ。・・・ね、ね、この研究の重要性がわかるでしょう?(猫撫声)」

 「・・・うーん。ま、動機は不純だけど、確かに実用化すべき技術だわね。

  でも結局は、メカ皇帝との愛の世界のためなのよね?」

 「そ、そうよ! 悪いの? 今はあなた達しかできないからやってもらうけど、本当なら真っ先に私とリツコで実験台になって、早くズボンをおろしたいのに!」

 「もう分かったわね、アスカ。さっ、あきらめて、とっととプラグスーツに着替えて実験に参加してちょうだい。

  私達がメカ皇帝やガーゴイル副指令になってズボンをおろせるようになるために!」

 ついに開き直ったリツコとミサト。


 というわけで、シンジ、アスカ、レイの3人は、エントリープラグに入った。

 LCLが添加され、神経接続の開始。そして光に包まれて・・・。



 −−−気がつくと、アスカはさっきの部屋に立っていた。

 目の前にはリツコとミサトがいる。

 「どう? コレは現実ではないわ。仮想世界の中に再現されたイメージよ。

  さっきまでの現実の部屋と、全然区別がつかないでしょう?

  私とミサトの姿も、コンピュータで再現しているの。

  声自体は、現実世界の私達のものをそのまま聞かせているのだけど」

 「ちょっと、ほんと、すっごい! 正直、ここまで出来るだなんて」

 「さあ、アスカ、お楽しみはコレからよ。

  体験してみたいお好みの作品を言ってちょうだい」

 「・・・そう突然言われても。

  ねぇ、他の二人はどうなのよ。ファーストとか、もう注文出した?」

 「レイからはすでに注文を受けて、データ作成中よ。

  じゃあ、あなたにも接続してみるわ。直接参加はできないけど、その世界を感じる事は出来るはずよ。

  会話もデータを取っていたから、そこから再生するわ」


 −−−「どう、レイ。なにか作品の希望はある?」

 「・・・アニメ。
  ・・・男の子が飛行機を作ってて、女の子が青い宝石を持っているの。『ナディゲリオン』の口直しにって、碇君が借りてくれたの」(ぽっ)

 「ああ、『不思議の海のナテ○ィア』ね。

  肝心の本編より、お遊びのパロディにばかりエネルギーを費やしていたやつね。

  ホビージャパンの広告写真を見たら、「Nノ○チラス号」のキットが出たのかと思ったんだけど、よく見たら昔の特撮映画の戦艦で、・・・てことはつまりデザインをパクったのね。まぁ、スタッフは「元ネタ」とか「オマージュ」とか「インスパイア」とか言うんでしょうけど・・・って作品ね」

 「・・・違うの。雲の中に古いお城が浮かんでて・・・」

 「ああ、『ラヒ○ュタ』。

  海賊にはお宝が与えられて終わるのに、何の罪もない、名もない一般兵はゴミくずのように虐殺される、Mカントクのダークサイドが覗けて結構怖いお話ね。

  ・・・はい、オッケーよ。

  キャラクターの配置は、あなたの好みで割り当てられるわ」



 −−−青い「飛行石」を持つ少女シータ(レイ)は、色付眼鏡のムスカ(ゲンドウ)によって飛行船で護送中、海賊(ミサト)に襲われ、その混乱の中、雲に落ちてしまう。

 しかし飛行石のおかげで落下はとまり、空から降ってきた彼女を見つけた少年と、運命の出会いをすることとなる。

 その少年は、パズー(シンジ)。

 (・・・やっぱりそういう設定かい。毒づくアスカ。)

 そしてまたも軍に囚われたシータレイは、軍基地の地下に保管されている古代のロボットを見せられる。

 数メートル程度の大きさの、・・・それはエヴァだった。

 (でもなんで弐号機なのよ? 零号機じゃないの?)

 シータレイの呪文とともに起動した”弐号機”は基地を破壊しつつ、レイの目前まで迫る。

 そして、怯えるレイの前でゆっくりとかしづいたのだった。

 (「それがお前の望みかぁ!」 アスカはツッコむが、むろんその声はシータレイには届かない)


 ・・・いよいよクライマックス。

 天空の城内部に連れ込まれたシータレイは、飛行石を渡せとせまるムスカゲンドウに言い放った。

 「なら、足をおなめ」

 「ハ?」(パズーシンジとムスカゲンドウのユニゾン)

 「『滅びの言葉』を言われたくなかったら、私の足をおなめなさいな」

 「な、何をバカなことを」

 「バル・・・」

 躊躇なく滅びの言葉を口にしようとするシータレイ

 あわてて口を押さえるゲンドウ


 ・・・その後は、いきなりのR指定の世界となった。

 ムスカゲンドウに足の指をなめさせ、陶然としているシータレイ。

 その横で耳を塞ぎ、「嘘だ、嘘だ、嘘だ。裏切ったな。僕の心を裏切ったな」とつぶやき続けるパズーシンジ。

 (・・・こ、これが、ファーストの願い? うげげ。

  途中まで普通のジュブナイルのヒロイン役を楽しんでたくせに、最後の最後でキレて、生々しい煩悩全開! あいつ、おとなしい顔して・・・)


 −−−アスカの意識は、またさっきの部屋に戻った。

 「アスカどう? ちゃんとレイのデータは感じとれたかしら? フィードバックに問題はなかったはずだけど」

 「あんなの途中でやめてよぉ。本人はあれで満足だろうけど」

 「ま、あれでレイもいろいろストレスが溜まってたってことよね。これでスッキリしてくれればいいわ」

 「ああいうの見せられると、リツコやミサトの欲望ってのも、あんまりバカに出来ないわねぇ。ファーストでさえあんな事するんだもの。ああ、でも気持ち悪い。

  ・・・・・・ねぇ。ちょっと、シンジのはどうなの?

  まさかあいつもドロドロなことを・・・」

 「彼のは今始まるわ。いいわ。シンジ君のデータもつなげてあげるわ」



 −−−いきなり巨大な白い宇宙船が画面をなめて進んでいく。

 (・・・これって、『スターウ○ーズ』?)

 「オビワン・ケノービー。あなただけが頼り・・・」

 と、浮かび上がるホログラムは・・・、

 (ちょっと、なんでファーストがレイア姫なのよ!)

 そして案の定、ダースベイダー(の声)はゲンドウだった。

 「ルーク、私はお前の父だ!」

 (そのまんまじゃない! ずっこけるアスカ)

 そしてラストは、「私たち兄妹だったの」と、ルークシンジに抱きつくレイアレイ。

 めでたし、めでたし、で終わったのだった。


 「ま、まぁ。こういう終わり方ならオッケーかしら。

  でも、あっさりしてたわね。シンジもバカよねぇ。

  これ、自分でやりたいように出来るんでしょ? なのに、配役を知り合いに変えただけで、あとはまるっきりオリジナルのままだったじゃないの。

  でも、なにより、私が出てきてないってのはどういうこと?!」

 ぶつぶつ文句を言うアスカに、リツコが答えた。

 「あら? アスカ、ちゃんと3作ともメインキャラで出てたわよ。キャラクターの外見はオリジナルのままだったけど、性格はアナタの性格になってたわ」

 「いなかったわよ!」

 「・・・チューバッカだったのよ」

 「あのバカシンジ!!」

 ガスッ!! −−−だがその八つ当たりパンチはリツコの身体をすり抜けた。

 「あらあら、この仮想世界ではあなたのパンチも無効よ。

  そして、この世界で私に逆らうとどういうことになるか?」

 ニヤッと笑うリツコに、アスカもびびる。

 「シンジ君の注文はもう1つ出ているわ。こっちが本命かしら。

  あなたも登場人物に設定されてるから、シンジ君には内緒で、あなたの意識もキャラクターにリンクさせて、登場人物そのものになってもらうわ。

  複数の人の意識を、仮想世界でまとめる事も出来るのよ。この場合、果たしてどういう結末になるか。くっくっくっ」



 −−−気がつくと、アスカは見知らぬ土地に立っていた。

 線路。そして小さな駅舎が見える。・・・駅?

 それにしても、とんでもない田舎。

 そして自分の姿は、ダサくて安物の灰色の服を着ている。

 駅舎のガラスに写った自分の顔を見る。

 顔はそのままだが、自慢の髪の毛が少し赤くなっている。

 それも三つ編みにしている。

 そう。私の名前は・・・アン。アン・シャーリー。


 マリラミサトと、その兄のマシュウ加持に引き取られたアンアスカ。

 やがて”心の友”、美しい黒髪のダイアナ(ヒカリ)と親友になる。

 そして学校では・・・、

 (ちょ、ちょっとこいつ、シンジじゃないの)

 姿はシンジだが、名前は・・・ギルバートブライス。

 あいつ、自分がギルバートになって、そしてアンに私を割り当てたって事は・・・。そ、それって・・・。だって、そんな。ああ・・・。

 「にんじん、にんじん!」

 ぼぅーっと妄想モードに入っていたアンアスカは、その言葉を聞いた瞬間逆上した。

 「卑怯ないやな奴! よくもそんなまねをしたわね!」

 石盤で、ギルバートシンジの頭を殴りつけたのだった。

 おかげでフィリップス先生(リツコ)に「アン・シャーリーは、かんしゃく持ちです」と黒板に書かれ、教室で立たされる事となった。

 「僕が悪かったんです」と謝るギルバートシンジだったが・・・。

 (何よ。つまり赤毛のコンプレックスって設定を利用して、この私と、空想の世界でいい仲になろうってつもりだったのね! ふん、あんたそれで取り入って私の事を”救える”だなんて思ってたりするの? ・・・もう、あんたとだけは、絶対にいや!)

 ・・・結果的に、原作の通りに展開してしまったのだった。

 その後、行商人から毛染め薬を売りつけられるが断って(だってこれで髪が緑になっちゃうのよね)、代わりにシャンプーを買った。・・・だがそれのせいで髪の毛が水色に染まってしまい、自慢の髪の毛をばっさりと切り、シャギーカットになってしまった事もあった。

 (これって、シンジの望んでる展開なのかしら? それとも私自身の欲求に沿った展開なのかしら?)

 そして「白ゆり姫」ごっこの途中、乗っていた小舟が沈みはじめる。

 (ああ、こんなエピソードもあったんだった! ええと、この後って確か・・・)
 そしてやはり、ギルバートシンジに助けられることになった。

 だがやはりギルバートシンジを許す気にはならず、やがてアスカは勉強に打ち込み始めた。

 現実世界では大学を出ているのだ。だからここでも1番にならなくてはプライドが許さなかった。とはいえ、初体験となるラテン語やフランス語の勉強は正直大変だった。

 しかし驚きなのはギルバートシンジで、おそらく彼も必死に勉強しているのだろう。成績もアンアスカに迫る勢いだった。

 (・・・ばっかねぇ。せっかくの仮想世界だってのに。楽しむ事もできないで、必死に勉強ばっかりして。私と張り合おうっての? とっとと諦めればいいのに。それとも、そんなに私に認めてほしいって事?)

 やがてシンジとアスカは、ライバルとしてお互い努力し始め、最後には学院でのメダルと奨学金を分けあうこととなった。

 そして夕焼けの下での、「僕達は一番の仲良しになれるんじゃないかな」と、ギルバートシンジとの和解。

 (あいつ、本当にうれしそう。そんな、別に下心があるってわけじゃなかったのね。私も素直になっとけばよかった)



 −−−そして物語は終わった。

 (・・・しっかしアイツも、赤毛のアンだなんて、結構少女趣味よねぇ)

 「さて、どうだったかしら。あらあら、そんなにニコニコして。

  こっちは正直、修羅場か、できれば濡れ場を期待してたんだけど。

  ま、いいわ。さぁ、今度こそあなたの番よ。ご希望は?」

 「え、別にいいわ。もう十分満足・・・あ、いや、疲れちゃったし」

 「そうはいかないわ。データ集めに協力してもらわなくちゃね。

  それじゃあ、あなたの心をサーチして、深層心理に聞いてみるってのは、どうかしら」

  (えっ?)

 ・・・とたんにメサイアが流れ出し、アスカにスポットライトが当たった。

  「いやぁあああ、心まで犯さないでぇ!」



 −−−気がつくと、

 「私の名前はアスカ。アルバトロ・ナル・エイジ・アスカ。

  ・・・地球は、狙われている」

 アスカは異星人と地球人の混血の少女になっていた。

 白眼視する地球人の中で、唯一心を開いてくれたのが、メンバー最年少のシンジ。
 やがてアスカは皆と打ち解けるようになり、そして最新型SPTレイズナーに乗り、追撃するグラドス軍を撃破していくのだ。

 (でも、私の機体なんだから、レイズナーは赤くしたかったのに。なんで、ベイブルなんてしょぼいやつが赤い色なのよ!)

 レイズナー登載のコンピューターは、「レディ」と答える”レイ”。

 しかしたまに、

 「命令ならば、そうするわ」

 「何を、願うの?」

 「あなたは死なないわ。私が守るもの」

 「どうしてそんなこというの?」

 「何を、言うのよ(ぽっ)」・・・などと、変な返答をするのが気になるが。


 そしてV−MAXにより暴走したレイズナーの攻撃によるゲイル先輩(加持)の死。

 ゲイル加持の復讐に燃え、アスカに襲いかかる、姉のミサト。

 3年後、グラドス軍により支配された地球での、レジスタンス活動。

 焚書をまぬがれた本を読んで語り継ぎ、レジスタンス運動でのアイドル的な立場になっていくシンジ。

 そして”使徒隊”(リーダーのゴステロは何故か日向。ミサトを狙っているからだろうか?)との死闘と、勝利。

 古代技術によって、ATフィールドで2つの星を断絶させ、地球に帰ってきたアスカはシンジと固く抱きあい、ハッピーエンドを迎えるのだった。


 −−−ミサトの声が聞こえる。

 「どうだった? アスカ」

 「・・・これが私の深層心理で求めたストーリー?」

 「ああ、今のは私の趣味」

 「お前かぁっ!!」

                               (終)

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執筆 1997-07-25 〜 08-03

 こんちは。本名顕治です。

 ちょっとオチがオチになってないんだけど、レイズナーの記憶が薄れてしまってるんで(キャラの名前とかも忘れてるし)、あまり濃くできなかった・・・。
 電波の受信状態が悪く、これ以上頭が進まないんで私はパスしますけど、・・・・・・誰か作ってね。




おおう!何て素晴らしい作品なんでしょうか!?
でも使用されたアニメを知らない人にはちょっと解りづらいですね・・・・・ 作者もナディアはともかく、レイズナーはね・・・ではまた。