『暗闇』第2話


WRITTEN BY ルーシェ




チュンチュン

気怠い情事の後。

何事もなかったような雰囲気。

すべてを悟ったような寝顔。

「こいつが・・あの・・・なんてな・・信じられないよ。」

すべての物語の終結を一身に背負ってる女が自分の隣にいる。

「こんなに無防備に・・
 よほど俺を信じてると言うことか。」

男は立ち上がり、台所に向かい冷蔵庫からビールを取り出す。

カシュ

この時代では珍しいプルタブをあけ一気に飲み干す。

「瑞穂・・または・・・ガーネット・・か・・」

男の呟きは誰にも聞こえない。







ピンポーン

「おっはよ〜!てっちゃん!」

「なんだ、かすみか・・どうした。」

インターホンと共にドアを開け、第一声を上げる自称美少女松田かすみ。

「たっちゃんは?」

「なんだ、起き抜けから拓也に逢いたいのか?
 ラブラブだな、熱いぜ。」

と、言いながら手をぱたぱた振る。

「そっ!そんなんじゃないもん。

図星なのだろう、声が小さくなっていく。

「えっ?なんだって?聞こえないなぁ。」

我ながら嫌みな顔をして聞き返す。

「なんでもありません!」

少し怒ったようだが、気にも留めずにくすくす笑う。

<少しは女の子に優しくしよう(笑)>

「まぁ、恋人同士だからな。  仕方ないか。」

やけに恋人と言うところを強調する。

「そっ・・・もういいっ!」

<おやおや、拗ねてしまいました。
 けっこ〜う、初ですな。>

「あぁ、そう。  逢いたくないんだぁ。
 可哀想になぁ、『あいつ』も。
 こんなに早く振られるなんてさぁ。」

「なによぉ、それ。
 誰も振るって言って無いじゃない・・って、たっちゃん?」

<振り向いたときには既に哲也は目を瞑っていた。
 何故・・って言うまでもないか。>

「・・・ん。
 かすみか・・なんだ?」

「え・えぇ!

<驚愕のあまりとてつもない大声を張り上げる。
 あ、向かいの家の窓ガラス割れてる。>

「・・・す、すまないがもうちょっと小さな声でしゃべって貰えないか?」

哲也だった体は耳を押さえて苦悶の表情を浮かべながら霞に諫言する。

「た、たっちゃん?」

「・・?」

なんだ?かすみが用が有るんじゃなかったのか?

「かすみが用が有るんじゃなかったのか?」

心に想ったことを素直に出す拓也。

「え、あの、その・・」

思いっきりどもるかすみ。

「用がなければ帰るぞ。
 ちと、陽射しが強い。」

「ちょ、ちょっとまってよ・・」

語尾が弱いが強い意志で呼び止めるかすみ。

拓也は哲也に呼ばれない限り自分の意志で出てくることなど皆無に等しい。

それを判っているからこそ、最愛の人との逢瀬を堪能したいのだ。

・・だが、心の準備もなしに・・ってところだろう。

「なんだ?」

そういう乙女心はちっとも気づかない拓也だった。









コンコン

「入れ。」

スチャ

ドアが開き、そこから黒いスーツに身を固めた屈強な体を持つ男が入ってきた。

柏木 充、『鴉』と呼ばれる男だった。

場所は暗闇。

部屋の中央には大きな机とゆったりとした椅子、そこに座る男が映し出されるだけだった。

「総帥。定期連絡の時間です。」

「そうか。」

総帥と呼ばれた男は鷹揚にそう答える。

「では。
 今日、午前未明に東が何者かによって刺殺されました。」

総帥の眉がピクリと動くが黒服は気にせずに続ける。

「警察は私怨からの殺害と動いてますがこちらの調査では明らかにプロの仕業です。」

「根拠は?」

「はい。
 東の屋敷は我が組織の中でも指折りの警備網が引かれており、たとえ知り合いでもボディチェックを受けるという
 徹底振りです。
 その中、素人が刃物を持ち込むなど不可能に等しいです。
 よって、刃物を忍ばせることのできる人間か、チェックを受けない・・つまり忍び込める人間と判断しました。」

「ふむ・・お前はその人間誰だと思う?」

総帥はさもどうでも良いように男に問う。

「は、私見を述べさせていただけるなら・・恐らく『死神』・・水石家のものの仕業かと・・」

「水石か・・奴ら・・まだ我らに楯突く気か・・」

総帥は独り言のように呟いたが、

「は、恐らく一族が絶えるまで・・・」

男は言葉を続けることを憚れた。

それを述べればこの部屋には鮮血が飛び散る。

それを判っての判断だった。

「そうか・・・もういい。
 下がれ。」

「は、では失礼します。」

スチャ

黒服が静かにドアを開けて部屋を出ていった後、総帥は椅子の背もたれに深く身を沈めた。

「京谷・・まだ・・お前は許してくれないのか・・
 ・・助けてくれ・・・瑞穂・・」

総帥は目から一筋の涙を流し静かに目を閉じた・・

男の名前は水石 徹。

裏の世界に身を預けた水石家の異端児。

そして、不幸の底に居る人間だった。

権力や力はあるが・・・人の温かみを知らない・・・やはり不幸な人間だった。

そして、物語は静かに歯車を狂わしていく…



やぁ、想ったより早く続きが書けました。

とりあえず、短いですがお読みください。

ここで設定というか人物紹介。

はじめはやっぱり主人公の千葉 哲也
歳は19歳。
東都大学 心理学科を専攻。
性格は底抜けに明るく、運動神経はそこそこ。
勉強に対して興味は抱かないが、成績は要領がいい成果中の上。
本気を出せばトップクラスに入れると自他共に認めてる。
女性遍歴は一人だけで、その女性も今は逝ってしまってる。
それが誰かは物語では絡む予定がないのでここでは記さない。