『IN THE DARK』



WRITTEN BY WIN






 惣流・アスカ・ラングレーが、この病院に入院してから約半年がたとうとしている。半年の

入院生活で、以前よりやせてはいるが、その美しさは衰えていないばかりか、意識のない

そんな生活をしていても一歩一歩大人へと近づき、さらなる魅力を携えている。

 「アスカ、入るよ。」

ガチャ、とドアが開き、一人の男、いや少年と呼ぶべきであろうか、が入ってきた。碇 シン

ジである。この少年は、自分ではまだはっきりとは気づいてはいないが、愛するアスカのと

ころへと、ほとんど毎日こうやって会いに来るのである。むろん、アスカと話ができるわけで

もない。しかし、毎日会いに来たことが無駄であったかというと、そうではない。最初は全く

無関心であったアスカも、近頃は、シンジに対しては部屋に入ってくるとそちらの方を向く

と行った反応を示すようになった。

 シンジは、持ってきた袋からリンゴとナイフを取り出すと、慣れた手つきでむき出した。こ

れは、未だ点滴でしか栄養をとれないアスカに食べてもらおうと、最近もって来始めたもの

だ。今日こそはと剥いたばかりのリンゴを、アスカへと差し出す。

「アスカ、食べてみてよ。」

そう言って、小さな、形の整った口元へと持っていく。しかし、アスカは口を開こうとしない。

「やっぱりだめか。」

残念そうに手を引こうとしたそのとき、アスカの口が開き、少し、ほんの少しだが、シンジの

差し出すリンゴを食べた。

「もっと食べてよ。」

必死で食べさせようとするシンジに答えるように、ゆっくりとではあるが、アスカはそのリン

ゴを食べ始めた。そうして、5分ほどかけてアスカはその一切れを食べ終えた。シンジは、

もう一切れをアスカに差し出すが、今度は、もう食べようとはしなかった。少しがっかりはし

たが、シンジは本当にうれしかった。そして、このことを担当医に知らせに行った。

「ゆっくりではありますが、確実に回復しています。いつとはいえませんが、きっと今までど

うりの生活ができるようになるでしょう。」

このことを聞いて、シンジはまたアスカと一緒に暮らせたらと、夢を膨らませた。こうして、

シンジは家へと向かった。

 明かりもつけずにモニターをじっと見つめている男がいる。その部屋は、カーテンも閉めら

れていて、モニターの光だけが唯一の明かりであった。そしてそのモニターには、ベットの

上で、横になっているアスカの様子が映し出されていた。

「ぼくのアスカが、あの男に無理矢理変なものを食べさせられている。あぁかわいそうなア

スカ。ぼくが助けてあげるからね。そうだ、これからはぼくと一緒に暮らそう。ずっと、そっち

の方が楽しいよ。引っ越しはいつにしようか・・・・・。」

一人、闇の中でモニターに話しかけるこの男は、明らかに狂っていた。かれこれ、一時間

も話していただろうか、座っていた椅子から立ち上がると、その部屋を後にした。この建物

自体はかなり大きなものであるようだ。そして、生活に必要なものはすべてあるようでもあ

った。しかし、なぜか光はなかった。カーテンは閉められ、明かりはつけていないどころか

蛍光灯がはまってすらなかった。しかも、ふつうの家にはない、様々な薬品、器具が乱雑

に置いてあった。その男は、別の部屋に入り、パソコンの前に座った。そして、なにやら

CD−ROMを入れ、ファイルを見始めた。どうやらそれは、病院の見取り図や、警備員の

配置図などのようであった。

 

 「アスカ、今助けてあげるからね。」


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