『洞木ヒカリの場合』
お姉ちゃんの声がした。「今は誰もいないから…いいよ」って。
誰か他の人の声も聞こえてくる。やだな、私が居るのに。
熱が出てるわけでもない。只、体がだるくて今日は欠席。
先生には風邪ですって、嘘をついた。
お姉ちゃんの友逹だろうか、誰かがとなりの部屋に居る。
コダマお姉ちゃんは友逹が多い。
そういやこの時間にお姉ちゃんが家にいるってめずらしい。
私は枕元の本をとった。読みかけの小説。
寝ころんだままページをめくる。
あ、ベットに腰掛けたな。
うちの家は壁が薄い。
このまえアスカが泊まりに来たときははしゃぎすぎた。
寝ないで遅くまで話し続けてたら、コダマお姉ちゃんにおこられた。
うるさいって。
「・・っん」
押し殺したようなお姉ちゃんの声。
衣擦れの音。
声が続く。「あっ」だって。
ほら、自分だって友逹が来たらうるさいじゃない。
何してるんだろう。
読んでる小説の方はそろそろクライマックス。
「・・ねぇ・・来て」
誰が来てるんだろう。つばささんかな? こまちさんかな?
二人はお姉ちゃんの友逹。ほっそりした綺麗な人だ。
「・・ん」
小説はキスシーンで幕を閉じようとしている。
こういうの、いいよね。
ちょっと想像してみる。雨の中、キスする鈴原とわたし。
「・・いぃ」
ガタン。
ベットが揺れてる。
もぅ、ホントにうるさい。何してんだろう。
「・・リョウジぃ・・っん!」
リョウジ? 男の人? お姉ちゃん何やって・・・
私は気付いてしまった。
「・・んっ」
ちょっと・・やめてよ・・
まさか・・セックスして・・る。
お姉ちゃんの声は確かにエッチな感じが混ざっている。
ホントにこんな声がするんだ・・。
私は、聞き耳を立ててる自分に気付いた。
読んでた小説が手から落ちてる。
ベットの軋む音。
何かがぶつかる音。
あらい息。
お姉ちゃんの声。
いけない。このまま聞いてたらお姉ちゃんに悪い。
そう思ってはいても体は動かない。
よく男子はアダルトビデオを見たって話をしてる。
みんなはそれを不潔だって言う。
そんなの見てるのは不潔だって。
じゃあ私も不潔なのかも知れない。
だって体が動かない。
頭では止めなくちゃって考えてるのに。体は動こうとしない。
「・・あぁっ」
お姉ちゃんの声が高くなってきた。
気持ちいいんだろうか。
男子と、セックスする。
鈴原と、セックスする。
「・・んっ・・く・・ん」
お姉ちゃんがひと際大きな声を上げた。
衣擦れの音。
ベットから降りた。
私はゆっくり深呼吸してみる。
いつからか息するのも忘れてたのかも。
学校で習ったことを思い出してみる。
確かここに男子のが入るんだよね。
くちゅり
ぬれていた。