『ヘブンナイト 真章』
「開始」
混沌とした闇が、そこには存在していた。
B兵器研究部長 巳剣隆弘は緊張した表情を顔に浮かべその闇の中に立っていた。
「よく来てくれた…巳剣研究部長。」
突然、闇の中で呼ばれ巳剣は、慌てて周囲を見回した。
だが、人の姿は見当たらない。
「は…はい、お、お呼びにいただいて光栄に思っております。」
「…ところえで、君は私がどのような人間か検討がつくか?」
声の調子からして、恐らく老人だろうと巳剣は考える。
「い…いえ、ただ幹部階級より上の方だとだけは…。」
「そうか…。」
巳剣は、そろそろ目がこの闇に馴れてもいいころだと思って訝しげに辺りの闇を見
回すがいっこうに闇から先を見ることができなかった。
「まぁ…そんな事はどうでもいいことだ、そんな事よりも「何故、君がここに呼ばれ
たか」という事の方が重要である。」
「はぁ…。」
巳剣は、いまいち納得できない様子でいるようだ。
「君は、覚えているか4年前のあの事件を…。」
突然、巳剣の顔色が「4年前」という単語に反応してかわった。
「えぇ…覚えています。」
「…私達が、神なる者になるべき行われた計画だ。」
巳剣は、苦々しい表情のまま顔を伏せる。
「……ヘブンナイト計画……」
老人と巳剣の声が静かに重なる。
数秒の沈黙がその場に訪れる。
「…。」
「……。」
「そ、それがいったいなんだというんですか!今更、「その」事を蒸し返してなにに
なるんです!」
巳剣が、突然怒鳴るに言った。
「フム…別に君を責め様などと思っては、いないさ。あの頃の君はまだ若かったし、
人を使う側ではなかった。使われる側だだったからな。」
「だったら…いったいなにを…。」
「簡潔に言おう、ヘブンナイト計画が動き始めている…。」
「!!。」
巳剣の顔に驚きの表情が浮かび上がる。
「そんな、馬鹿なっ!! 4年前の事件でヘブンナイト全機は自己統制がきかなく
なって「宿主」もろとも消滅したはずです。」
「それは、確かな事だ巳剣君…だが、あれらのヘブンナイトは実は私達がコピーして
造った、不完全な物なのだよ。あの頃の我らにはオリジナルの自己統制システムを解
析しそれを取り入れる技術はまだなかった…そこで私達は考えた。
オリジナルの自己統制システムを未解析のまま無理やりコピーしてしまおうと。
自己統制システムを構成する物質は、代用して我らが造り上げたナノマシンシステム
を使い、自己統制システムのデ−タ−を、随時ナノマシンから私達に送信させたの
だ。」
「造った…コピー…オリジナル…?」
「なんだ、知らなかったのか…4年前のあのヘブンナイト達は私達がアメリカから発
掘した4体の「神なる者の尖兵」と呼ばれる生命体をコピーして私達が造りあげた物
なのだ。」
「なっ…!」
巳剣は絶句した。
「それじゃぁ…私達研究グル−プが造りあげた物はいったいなんだったんですか?」
「いっただろう、あの頃の君は使われる側だったと…研究グル−プのチ−フの手足と
なり私達が提供した情報、資金、人員、サンプル体を使っていた。
君達は、知らない内に私達に私達の理想とするブンナイトを造らされていたのだよ
!!いや、…言いかえれば君達がオリジナルからコピーを造りあげたのかもしれない
な。」
巳剣は憔悴しきった顔つきで虚空をみつめた。
自分達が造りあげた物が実はただのコピ−だったという事が、そして誰かの手の上
で造らされていたという事実が、彼の研究者そして開発者としてのプライドを傷つけ
たのだ。
「そんな…。」
「話を続けさせてもらう。ナノマシンから送られてきたデ−タ−は、実に興味深い物
だった。ヘブンナイトが傷ついた時、その傷を癒そうと回復細胞が自己統制システム
から命令を受けて動き出すのだが、…その時ある現象が確認されたのだよ。自己統制
システム内部から強力なエネルギ−体が発生し回復細胞にエネルギ−を瞬間的に与え
るのだよ。
それによって、自己回復が起こるのだ。4年前のヘブンナイトは、自己統制システム
を構成する物質の代用としてナノマシンを使ったせいで、自己回復時に必要とするエ
ネルギ−を供給する事ができなかった…それなのにエネルギ−を供給しようとする、
自己統制システムは、とうとう架空のエネルギ−を造りだし供給を始める。後はこれ
の繰り返しだ。
そこまで言えばわかるだろう。」
「架空のエネルギ−からは何も得ることができず、自己回復が完了していない時点で
それを完了させたと見なしていく、それを繰り返していくごとにだんだんと、自己統
制システムとヘブンナイトとの肉体との関係が狂い始め、そして最後には自己統制シ
ステムがブレイクアウトしてしまうという事ですね。」
巳剣は静かにそう言った。
「そういう事だ。私達はそれに気ずき、オリジナルから自己統制システムを構成する
物質を採取しそれを増殖させる事に成功し、そしてそれを取り入れ新たなヘブンナイ
トを造りあげた。」
「……。」
「君が所属するB兵器研究グループに「私」からある要請がある。」
「……。」
「私は4体の「神なる者の尖兵」の内、一体のオリジナルを手に入れる事ができた。
そのオリジナルを使い私達が造ったヘブンナイトを破壊するヘブンナイトを造っても
らう。」
それを聞いて巳剣の顔は今までの自虐的だった表情を驚きの表情に変えてしまっ
た。
「はっ…!?今何と…。」
「私は、もう我慢できないのだよ。同じ過ちを繰り返し悲しい悲劇を再び蘇らそうとする者達を。」
(注) これは、前作「ヘブンナイト」から4年後の話です。